14文字の伝言 あなたを 叩き起こし 今日も騒がしい一日が始まる 「好き嫌いせず、野菜も食べなさい」と まだ聴き目の薄い小言を 繰り返す 今日もまた 泥だらけになって 傷を作って帰ってくるのかしら 心配ばかりで 小皺も増えるわ まったく 男の子の母親なんて なるもんじゃないわ! けれど そんな毎日を 私は愛してた 本当は 残酷な この世界を 嗚呼… 時間よ止まれ 穏やかな日常(とき)をずっと ずっと… ずっと… ずっと… あなた達と 生きたかった…… でも それは愚かな願い 人はいずれ死に逝くもの 子は育ち 親を超えてゆく それが それこそが幸せ 平凡な私は 長い間 自分の命以上には 価値のあるものを 見つけられなかった あなたが 生まれるまでは… ——だから 特別じゃなくても 人より優れなくても 誰かに認められなくても あなたは生きてるだけで 既に偉大なのよ お願い どうか忘れないで—— 例えあなたが生まれた事を いつか呪う日が来たとしても 信じているわ あなたの行く道は 間違ってなどいないと どうか 自分を信じて—— 最期の空に 羽撃く鳥よ どうか あの子に伝えておくれ 愛しているわ 愛しているわ うまれてきてくれてありがとう