小説家 故郷には雪がちらついていると聞いた。 僕はと言えばまだ暗い部屋の中。 筆を止める、は迷いか否か。 いつかの幻のせいか。 情けないとも分かっちゃいるが、 身体は眠ったまま動かない。 動きたい、動けない。 最終形を無くしたストーリー。 そんなものが見たい奴は当然いないな。 故郷に積もった雪はすぐ溶けたらしい。 僕はと言えばもう覚悟をきめて、 捨てること、残すことを考えていた。 最終形を望んだ向こうに かなしみが残ってもしょうがないな。 完成形を目指したストーリー。 拾い集めた原稿と汚れたこの手で。 最終形を無くしたストーリー。 そんなものが見たい奴は当然いないな。 完成形をめざしたストーリー。 雪がほんの少し積もる街の話。